10、願いごと 「龍神さま、聞こえてる？」 「聞こえてる。それは無理だ。」 「お願い、連れてって。もっと遠くの、深い海の中を見てみたいの。」 「無理だ。」 娘の願いをつっぱねながらも、一方で、龍は果たしてそんなことが出来るのか？と考えていた。出来るだろう。外の空気を自分がまとって、娘を背中に乗せればいい。 「出来るんでしょ？」 娘は龍の心を読んだかのように、真剣な顔で言った。 「出来ない。」 「お願い。急に思いついたんじゃないの、ずっと思ってたの。でもきっと、駄目って言われるんだろうって思って。」 「駄目だ。」 「駄目な理由を言って。」 「・・・。」 理由。 龍は、娘には